飼い主にとって愛猫の健康は最大の関心事です。愛猫が何度もトイレに行く姿を見ると、病気じゃないか心配でたまりませんね。
実は猫が頻繁にトイレに行く原因は病気だけとは限りません。
ただ、トイレ習慣の変化は、猫の健康状態を把握する上で気にしてあげたい最重要ポイントに違いありません。
この記事では、元気な猫が頻繁にトイレに行く場合に考えられる理由や病気、対処法をご紹介します。
※病気は早期発見が重要なので、気になる場合は迷わず獣医師に相談しましょう。
猫のトイレ回数の目安


そもそも猫は1日何回トイレするの?
猫のトイレ回数には個体差がありますが、日頃から愛猫の目安を知っておくことが重要です。
急な変化は体調の変化を示している可能性があるため、注意が必要です。
おしっこの平均回数
健康な成猫の場合、おしっこの平均回数は1日に2〜3回程度です。子猫や高齢猫は4~5回排尿することがあります。1回の排尿量は平均20〜40ml(1kgにつき)ほどです。ただし、年齢や水分摂取量、気温、生活環境などの要因で、排尿の回数や量は変動します。
1回あたり50mlを超えるようであれば「多尿」の可能性があるので獣医師に相談しましょう。
>>おしっこの回数&量がはっきり分かるトイレ「トレッタ」のレビュー
うんちの平均回数
健康な成猫の場合、うんちの平均回数は1日1〜2回程度です。子猫の場合はもう少し回数が多く、1日2~3回程度、高齢猫は便秘になる傾向です。
1日おきや2〜3日に1回程度しかしない場合もあります。排便したいのに出せない、排泄時に力んでいる、苦しそうという状態でなれけば、大きな問題ではないとされています。
食物繊維の摂取量が多いと、排便回数や量が増える傾向です。うんちも個体や年齢、食事内容、運動量、生活環境によって変動します。
水分摂取量も便の硬さや回数に関係します。運動量が少ないと便秘になりやすいため、注意してあげましょう。季節や気温の変化で回数が変わることもあるため、急な回数の増減には気をつけてください。
猫が何度もトイレに行くときに考えられる病気

猫が頻繁にトイレに行くとき、診断される代表的な病気には次のようなものがあります。
- 膀胱炎
- 尿道閉塞
- 尿路結石
- 腎臓病
※上記はあくまで猫に多い代表的な病気の例です。素人判断は避け、迷わず獣医師に相談してください。
病気は早期発見と適切な治療がなにより重要です。
専門家の診断を受け、適切な治療を始めれば、それだけ早く猫の辛さを解消してあげることができます。
膀胱炎

膀胱炎は猫に非常に多い病気です。
次のような症状があります。
- 頻尿
- 血尿
- 排尿痛
- トイレ以外での排泄
膀胱炎の原因には結石、細菌感染、奇形、腫瘍、特発性などがあります。
なかでも「特発性膀胱炎=原因が特定できない膀胱炎」は猫だけに見られる症状です。膀胱自体の問題ではなく、精神=ストレスが大きく関与しているのではないかと考えられています。再発しやすい病気なので注意が必要です。
特発性膀胱炎になりやすい猫は次のような特徴があるといわれています。
- 室内で暮らしている
- 集合住宅
- 多頭飼育
- 相性の悪い猫と暮らしている
- 一人になれる高所がない
- 固まらない猫砂を使用している
- オス猫
- 肥満猫
- 2~10歳
- 避妊・去勢済み
- (長毛種)
猫のストレスになっていそうな原因がないか確認し、対処してあげましょう。
猫の膀胱炎は非常に多く、特に多頭飼育でトイレを共用している場合は見逃しやすいので、日頃から尿の量や回数をチェックして見逃さないことが大切です。
尿道閉塞

尿道閉塞は、雄猫に多く見られ、尿道が詰まって尿が出せなくなります。
数滴しか出ていない、頻繁なトイレ、排尿困難、痛みの表情、血尿、食欲がない、元気がない等が見られます。緊急性が高いため、兆候が出たらすぐに獣医師に相談してください。
原因はさまざまですが、膀胱炎から尿道閉塞を起こすこともあるので、注意深く猫の様子を観察しましょう。
早期発見・早期治療が大切です。猫の様子に変化があったら、すぐ獣医師に相談してください。慢性化すると完治が難しくなります。
» 猫のトイレ掃除の重要性や掃除方法、臭い対策について詳しく解説
尿路結石

尿路結石とは、本来であれば尿に溶けているミネラルなどが、何らかの原因で尿内で溶けきれず、尿路内(膀胱内、尿道内)で結晶化し、砂状のものや石ができてしまう病気です。
猫は「ストルバイト結石」と「シュウ酸カルシウム結石」の2種類があります。
粗相、頻尿、血尿、排尿痛、排尿困難などの症状がでます。尿道に詰まって尿を排泄することができなくなり、命にかかわる危険な状態になることもあります。
原因は様々なものが関係していますが、ストルバイトは尿中のミネラル濃度と尿のpHが大きな影響を与えると考えられているので、普段から充分な水分摂取、良質な食事管理をしてあげることが重要になってきます。
腎臓病

猫の病気で切っても切れないのが腎臓病です。
年齢が高くなるにつれ発生率が上がりますが、シニア猫の5頭に4頭は慢性腎臓病といわれています。
初期の腎臓病の症状として「多尿」かつ「多飲」がみられます。血液検査で異常が出た段階では、すでに腎臓病が進行してしまっている可能性があるので、初期の段階「多飲多尿」をいかに見過ごさないかが大切になります。
異変を感じたら、早めに獣医師に相談しましょう。
定期的に健康診断を受ける、ストレスを軽減し快適な環境を整える工夫も大切です。
症状が進行していると食欲不振や嘔吐、体重減少の兆候が現れます。残念ながら、腎臓病を完全に治すことは困難です。しかし、適切な管理を行えば、猫の生活の質を維持しながら長生きさせられます。治療は主に対症療法が中心で、特別な腎臓病用のフードを与える食事療法や、点滴による水分補給などです。
猫を病院に連れて行くべきタイミング

猫は痛みや不調を隠す習性があるため、飼い主さんが感じるささいな違和感に気付けるかが重要です。猫が元気な様子でも、トイレに頻繁に行くなどの異変を感じたら、早めに動物病院に連れて行きましょう。病院に連れて行くべきタイミングについて解説します。
すぐに受診が必要なサイン
猫が元気そうに見えても何度もトイレに行く症状が見られる場合、緊急性の高いサインが出ているかもしれません。血尿や排尿時の痛みが見られる場合は、速やかに獣医師の診察を受けましょう。排尿困難や尿が出ない状態が24時間以上続く場合も、早急な受診が必要です。
放置すると生命に関わることもあります。1日のうちに頻繁な排尿が続く場合や、通常と異なる場所で排尿する行動が見られる場合も要注意です。尿の色や臭いに明らかな変化があるときも、注意してください。
食欲不振や嘔吐などの症状を伴う場合は、尿路系以外の問題も考えられるため、すぐ獣医師に相談してください。急激な変化や普段と異なる行動が顕著に見られる場合も、ためらわず早く受診をしましょう。早期発見・早期治療が、愛猫の健康を守ります。
病院に行けない場合の対策
病院での検査は、問診から始まり症状の詳細や発症時期、生活環境などが確認されます。猫の状態を把握し、適切な検査や治療方針を決めるために欠かせません。
病院へ行くくこと自体が大きなストレスになってしまう猫や、交通手段の関係で猫を連れていけない場面もあるかもしれません。
病院によっては、猫を連れていかなくても、尿を持参することで検査をしてくれる所もあります。獣医師に直接診てもらうことが何より一番良いですが、どうしても難しい場合は病院に相談してみましょう。通院を先延ばしにして病気の発見が遅れてしまうことを避けることができます。
病院に行く際は、違和感のあった尿の状態を写真に撮ったり、日頃の排泄データ、記録があれば持参しましょう。診断の大きな手掛かりになります。
早期発見・早期治療が猫の健康を守ります。気になる症状がある場合は、ためらわずに動物病院を受診しましょう。
» 猫の健康診断ガイド
猫の特発性膀胱炎 再発を防ぐ工夫を紹介


病院で特発性膀胱炎と言われたの。
繰り返す子が多いみたい…
特発性膀胱炎など、精神的なことが原因で膀胱炎や頻尿になった場合は、なかなか治らず、再発する子も非常に多いです。
愛猫に何度も苦しい、辛い思いはさせたくないですよね。飼い主さん側で対応できる工夫をしていきましょう。
- ストレス原因をさぐる
- リラックスさせる
- トイレの環境を整備する
ストレス原因をさぐる
不安や緊張などが原因でストレスになっていることがあります。ストレスの要因には次のようなことがあげられます。
- 環境の変化
- 新しい家族が同居
- 縄張り争い
- 生活リズムの変化
猫は大変繊細な動物なので、引っ越しや家具の配置換え、新しく家族が増えた(結婚、出産など)、仲が良くない同居動物がいる、飼い主さんの生活リズムの変化などでも敏感に影響を受けます。
これらの要因を取り除くのは難しいですが、無理に仲良くさせようとしない、急に近づけない等、猫が自分から歩みよる時までそっと見守るなど、猫自身のペースに合わせてあげることが大切です。
猫にとって快適な生活環境を整えれば、改善につながります。
» 猫のストレスサインの見分け方
» 多頭飼いのトイレ、これで安心!猫も人も快適な空間の作り方
リラックスさせる

ストレスを減らすだけでなく、リラックスさせてあげることは、膀胱炎、頻尿の解決だけでなく、猫の健康面においても大切なことです。
猫がリラックスできる、猫専用のくつろぎスペースが確保されているか確認してみましょう。猫が安心して休める静かで落ち着いた場所を作ります。高い場所に休憩所を設置するのも良い方法です。猫は高いところが好きなため、窓際の棚やキャットタワーを用意すると喜びます。
他にもリラックスさせるには以下の方法があります。
- 適度な日光浴
- 優しく撫でたりブラッシングする時間
- 爪とぎ場所の用意
- 適度な運動
- 猫フェロモンの使用
- 飼い主のリラックスした態度
定期的に遊び時間を設けるのことも大切です。飼い主との遊びは猫にとって非常に楽しい時間です。

うちの猫、おもちゃに反応しないんだよ
定期的に新しいおもちゃを導入すれば、猫の好奇心を刺激し、退屈しにくくなります。おもちゃの種類、動かし方を工夫してみましょう。またたびを使うのもアイデアです。
環境を整えることも重要です。猫用のフェロモン製品を使用したり、猫用のBGMを流したりすると、リラックス効果が期待できます。
環境の急激な変化を避け、規則正しい生活リズムを維持することも効果的です。
» 猫との遊び方
トイレの環境を整備する
トイレ環境の整備は、猫の頻尿問題の改善に重要な対策です。
快適なトイレ環境を整えれば、猫のストレスを軽減し、適切な排せつ習慣を促せます。トイレの数は猫+1を基本とし、常に清潔に保ちましょう。設置場所が適しているかの検討も大切です。
猫砂の種類や深さを調整したり、トイレの周りの温度や音に気を配ってあげるのも効果があります。カバー付きトイレを好む子もいます。複数の猫を飼っている場合は、各猫が好みのトイレを選べるように複数用意するのも良いです。猫同士のストレスを軽減し、快適な排せつ環境を整えられます。トイレの位置を固定することも重要です。
猫は習慣性の強い動物のため、トイレの場所が決まっていると安心感を得られます。猫のトイレ環境が改善されれば、泌尿器系の問題が解決する可能性が高まります。
» 猫のトイレの理想的な場所選びを解説
» 理由はさまざま!猫が突然トイレで排泄しなくなる原因と対策
元気な猫が何度もトイレに行く2つの理由


病気じゃなくて元気だけ、何度もトイレに行く時もあるよね?
病気でもなく、元気な猫が何度もトイレに行くケースもあります。次のような理由があります。
- 食生活の変化
- 新しいトイレや砂への興味
※病院へ行き、疾患がなかった場合のケースをご紹介します。
食生活の変化

猫のトイレ習慣に大きな影響を与える要因の一つは、食生活の変化です。
新しいフードに変更したり、ウェットフードの割合が増えたりすると、猫の排せつ回数が変わる場合があります。
ウエットフードには80%以上の水分が含まれているので、割合が増えると自然におしっこの量や回数も増えるということになります。
食生活の変化によって猫の体内での水分量や栄養バランスが変わると、トイレの回数も変化します。塩分の多い食事を摂って水分摂取が増えたことで利尿作用がはたらき、トイレの回数が増加していることもあります。
新しいトイレや砂への興味

猫の行動の中でも興味深い側面の一つですが、多くの猫はトイレに対して特別な関心を示します。
新しいトイレや砂は、猫の探索本能を刺激します。猫は本来、好奇心旺盛な動物です。新しいトイレや猫砂を設置すると、興味を示してにおいや感触を確認したり、隠れ家や遊び場として利用したりします。
特に子猫は好奇心旺盛なので、新しい砂の感触や香りに惹かれ、砂を掘ったり砂の上で長時間過ごしたり、寝転がったりします。新しい環境に慣れようとする猫の自然な反応です。
砂を変更したことで、マーキング行動で訪れる場合もあります。

猫の本能や好奇心からくる行動の場合もあるんだね!
» 猫も飼い主もストレスフリー!猫砂飛び散り防止のための改善策
まとめ

猫の頻尿には、さまざまな原因が考えられます。頻尿の原因は病気だけでなく、ストレスや環境の変化も影響しますので、飼い主の重要な役目として、愛猫の様子を日頃から注意深く観察しましょう。
愛猫の平均的なトイレ回数を知っておくと、異常に気づきやすくなります。
尿量や回数、排尿時の様子などが分かるシステムトイレを使うことも非常に有効な手助けになります。
血尿や排尿困難などの症状がある場合は、すぐに獣医師の診察を受けてください。
繰り返さない自宅でできる対処法は、ストレス軽減、トイレ環境の改善などです。
猫の健康を守るために、定期的な健康チェックをしていきましょう。