さいたま市動物愛護ふれあいセンター主催の「猫の老後ケア」というセミナー(2018年4月)で獣医師から学んできたことをもとに、今回は
老猫(シニア猫)がご飯を食べないという悩み
について取り上げたいと思います。
老猫(シニア猫)さんが食欲不振でご飯を食べないのは「安いフードだからかな、、、」「もっと高いフードじゃないとダメかな?」と自分が与えているフードに自信がなくなってしまう方も多いですが、まずは色々揃える前に、老猫(シニア猫)さんの食欲が出るようにサポートをしてあげませんか?
猫さんが自ら「食べたい!」と食欲が出るフードの与え方を5つご紹介しますので、それらを試して、老猫(シニア猫)さんがご飯を食べない悩みを解決していきましょう!
シニア老猫がご飯を食べない 食欲不振になる理由
老猫(シニア猫)と言われる7~8歳を越えると、ご飯を食べなくなったという悩みが増えてきます。
猫の7~8歳というのは人間年齢でいうと45歳くらいです。
人間もこの位の年齢になると、健康診断で気になる所が出てくる方もチラホラいらっしゃいますし、若い頃と比べて量が食べられなくなったりします。
猫さんも人間と全く同じで、自然に食が細くなるのです。
その他、歯が弱ってきたり、飲み込む力、咀嚼力が弱くなってきて、上手く食べられなくなっているという場合もあります。
そうなると食べられるモノが限られてきてしまうので、カリカリは食べない等、食の好き嫌いが激しくなる子もいます。
また、消化器の機能も低下してくる年齢ですので、消化に負担がかかる食事が多いと下痢しがちになったりと猫さんにとって食事が楽しいものではなくなり、ご飯を食べたくない、食欲不振の状況になってしまうのです。
老猫がご飯を食べない 食欲不振対策①開封したてのフードをあげる
シニア猫(老猫)さんには、できるだけ開封したてのフードを与えるようにしてみましょう。
猫さんは味らい(味を感じる感覚)より臭覚が発達しています。
猫さんは、味が美味しいから食べる、というのではなく、ほとんどが臭覚で食欲がそそられて食べるのです。
キャットフードは袋を開けた時が一番香りが強くあり、徐々に香りが飛んでいきます。
香りの好みはあっても、間違いなく「封を開けたてのフードの匂い」は猫さんにとって食欲を呼び起こすきっかけになります。
ですので、フードの香りがしっかりある、この「開けたての匂い」でシニア老猫さんの食欲サポートしてあげましょう。
そのためには、フードは大袋ではなく小分けパックになっているものを選んだり、大袋の場合は、開封後にジプロックなど密封できるものに小分けしておくと良いでしょう。
老猫がご飯を食べない 食欲不振対策②炭水化物が多い食事になってない?
以下の表は人間、犬、猫の比較表です。
「消化管の長さ」をご覧ください。
人 | 犬 | 猫 | |
歯 | 32本 | 42本 | 30本 |
唾液 | あり | あり | なし |
消化管の重さ | 11% | 2.7〜7% | 3% |
鼻粘膜表面積 | 2㎠ | 200㎠ | 20㎠ |
臭覚 | 1000 | 猫より多 | 6000万 |
味らい | 9000 | 猫より少 | 500 |
消化管とは、つまり腸のことです。
この%は体に対して占める割合を示していますが、猫さんは腸がとても短いことが分かります。
一般的に
草食動物=腸が長い(草などは消化されるのに時間がかかるから)
肉食動物=腸が短い(肉類は消化が良いから長い必要はない)
と言われています。
(人間でも欧米人は短いけど、農耕民族だった日本人は腸がとても長いと聞いたことがあるかと思います)
本来、猫さんは完全肉食なので、腸は食生活に適した長さにできているんですね。
それなのに植物や炭水化物(穀物)の割合が多いものばかり食べると、消化できずに下痢になったりするのです。
昔は「猫まんま」なんて言って、人間のご飯に鰹節をかけて与えていた時代があります。
勿論それ以外に生活環境など様々な要因がありますが、今よりずっと短命でもありました。
せっかくご飯を食べたのに下痢をになってしまったりと、猫さんに辛い思いをさせてしまうのは絶対避けたいですね。
近年はグレインフリー(穀物不使用)のキャットフードも増えています。
ただ、原材料にこだわっている為、どうしても高級なものが多いです。
実は、アレルギーなどの理由が無い限り、必ずしもグレインフリー(穀物不使用)のフードを選ぶ必要はありません。
キャットフードに入っている穀物は、猫さんがそのまま直接食べるのとは違い、加工されているので消化性がアップしているからです。
ただ、やはり炭水化物の割合が高くなるのも避けたいので、穀物の入っているフードを選ぶ場合、割合としては40%くらいまでの配合のものを目安に選びましょう。
キャットフードに穀物が入っていても大丈夫なことは分かったよ。
でも、どうせ選ぶなら肉の割合が多い方がいいよね?
猫さんは炭水化物が苦手なんだから肉100%に近い方がいいのかな?
なんて思ってしまいますが、老猫(シニア猫)さんの場合、肉(たんぱく質や脂肪)の割合が高くなると、高タンパク過ぎて、それはそれで内臓に負担がかかってしまいますので、あくまでバランスが大切ということになります。
獣医師によると老猫(シニア猫)さんのフードで肉類の割合は25~30%のものがバランスが良いとのことです。
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老猫がご飯を食べない 食欲不振対策③少量づつ与える
猫さんに沢山食べて欲しいから、ついたっぷりと与えてあげてしまいがちです。
老猫(シニア猫)さんの場合は少量づつ与えてみましょう。
これは、「袋を開けたての香り」で食欲をわかせる事にもつながります。
ちょっとづつ、一日何回にも分けて食べる「チョコチョコ食い」でも問題ありません。
手から与えるのも効果的です。
その際に猫さんの鼻先に持って行ってフードの香りを嗅がせるのも良いですね。
あと、猫さんはスプーンでフードを与えると興味を示すことが多いです。
うまく食べられずにスプーンからポロッと落ちてしまうことも多いですが、まずはフードに興味を持ってくれることが大切なので根気よく試してみて下さいね。
老猫がご飯を食べない 食欲不振対策④水分の多いものを与える
老猫(シニア猫)さんになると、飲み込む力や咀嚼力が低下してきます。
そうなるとカリカリフード(ドライフード)だけを与えても嫌がるし、食欲もわかず、食べてくれない子も多いです。
その場合はウエットフードの力を借りましょう。
ただ、ウエットフードばかり与えていると、歯垢が落ちずに歯周病になりやすかったりと弊害も出てくるので、ウエットフードの上にカリカリをトッピングしてあげたり、カリカリを混ぜてあげたりと工夫をして与えましょう。
ウエットフードを与えるメリットは、食欲が増すだけではなく、不足しがちな水分も補えるという利点もあります。
ちゅ~るは、食が細くなった老猫(シニア猫)さんも反応を示す程人気です。
ここで注意しなければならないのは、
ちゅーるには「おやつ」と「総合栄養食」の2種類があるということです。
猫さんの食い付きが良いのは圧倒的に「おやつ」のちゅーるです。
しかし、おやつのちゅーるは90%が水分で出来ていますので栄養は摂れません。
飲まず食わずの状態なら、何も口に入れないよりましですので、おやつのちゅ~るで良いでしょう。ただ、これだけでは栄養は摂れなくて猫さんの体力は落ちて行ってしまいます。
ドライフードも食べない、ウエットフードも食べない、ちゅ~るならなんとか食べてくれる、、、と食事の代わりに与えるなら、「おやつのちゅ~る」ではなく「総合栄養食のちゅ~る」の方を選んであげて下さいね。
仮に総合栄養食のちゅーるだけで1日の栄養を満たそうとすると体重1kgあたり約6本が目安なので、3キロの猫さんなら1日に18本も必要ということになります。
ちゅーるだけに頼るのは経済的にも現実的な量ではないかもしれません、、、
老猫がご飯を食べない 食欲不振対策③人肌に温める
元来、猫は自ら狩りをしてネズミや小鳥などの小動物を食べていました。
温もりのあるものを食べるのが猫さんの本来の食生活なのです。
猫舌なんて言いますが、適度に温かいものも好んで食べるのです。
ドライフード(カリカリタイプ)なら、与える直前にフードをざるに入れて、お湯をかけるか、湯の中に一瞬くぐらせてから与えてみて下さい。
フニャフニャになるほど浸ける必要はありません。
こうすることでフードの余分な油も落ちますし、温もりも出すことができます。
同時に、不足しがちな水分もとれます。
ウエットタイプの場合、一度に食べ切らない時は冷蔵庫に保管する事も多いと思います。
与える時、そのまま冷たいままのフードを与えても猫さんは喜びません。
人肌に温めてから与えてあげましょう。
レンジを使う手もありますが、熱くなりすぎたり、温度のムラができたり、水分が飛んでしまったりするので私はあまりおすすめしません。
おすすめは、こういう湯せんにかけられるポリ袋です。
食べきれなかったウエットフードをこのポリ袋に直接入れて保管しておきます。
この袋はそのまま湯せんにかけられるので、与える前にお湯に少し浸けければ簡単に人肌にしてあげることができます。
開封前に保管するのが前提ですが、いつでも食べごろの温度を保てるストッカーを利用するのもおすすめです。猫さんが好むと言われている39度をキープできます。
ウエットを温めると、より匂いが広がるので、食欲が27%もアップするという統計もあります。
まとめ
今は老猫(シニア猫)さん用のフードの種類も増えていますね。
とは言え、食欲不振だったり、食べてくれなければ、せっかくのフードも意味がありません。
今回はご飯を食べてくれない、食欲不振対策を5つご紹介しました。
1. 開封したてのフードを与える
2. 炭水化物が多い食事を避ける(穀類と肉類のバランスを見る)
3. 少量づつ与える(手やスプーンを使うのもおすすめ)
4. 水分の多いフードを与える
5. 人肌に温めて与える
食べてくれないと飼い主としても切ないですし、喜んで食べてくれる姿は本当に嬉しいものです。
老猫(シニア猫)さんは食への関心自体も薄れてくるので、その子にあった与え方を見つけ、工夫をして食べさせてあげて下さいね。
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